
代表取締役社長執行役員
吉原 祐二インタビュー
接客の面白さを知ったのは、店舗での経験から
- Q.2024年6月の株主総会をもって社長に就任されましたが、これまでの経歴を教えてください
- 吉原:当社に入社する前は、短い期間でしたがサービス業に従事していました。そこで初めて社会に出てお客様に対して接客をしたということになります。その後退職して、どんな仕事をしようかなと思っていた矢先、先に当社に就職していた兄からケーズデンキで働いてみないかと声を掛けられ、やってみることになったんです。
- Q.最初はどのような仕事をされたのですか?
- 吉原:新たにオープンする店舗にオープニングスタッフとして入ったため、最初は什器の組み立てや商品の陳列など、お店を作る仕事からスタートしました。オープンしてからは店内で販売に携わるようになりました。当時は若かったですし、今の店舗運営のようにしっかり担当が決まっていて分業になっているわけではなかったので、大型商品の配達やエアコンの設置補助などの力仕事にも駆り出されました。結局、何から何までやっていました。そこで経験を積んで、その後、数店舗の店長にもなりました。
- Q.経験がない中で、すぐに家電製品を売ることができたのですか?
- 吉原:当時はビデオデッキの普及最盛期でした。エアコンも多くの家庭には、まだ行きわたっていなかった。当時の家電製品は機能もシンプルでしたし、今ほど多品種ではなかったですから、まずカタログを読み込んで知識を頭に入れます。そして一つ接客してカンをつかむと、次の方にも同じような説明でどんどん売ることができました。例えば、ビデオデッキでビデオを再生して一時停止ボタンを押す。そうすると画像が荒れる機種と荒れない機種があるんです。その違いが値段の違いですということを説明したりする。そういった、お客様の関心を引くことができるネタをいくつか持っていましたよ(笑)。
- Q.接客しながらどんどんスキルを上げていったのですね。
もともと、家電製品が何よりも好き、という少年だったわけではないと? - 吉原:そうですね。学生時代は音楽が好きで、テレビの前にラジカセを置いて音楽番組を録音したりしていましたし、自然と家電品には親しんでいましたが、家電オタクというわけではなかったです。幼少期は動物が好きだったので、ありとあらゆるペットを飼いました。その影響で獣医師になりたいと思っていたころもありましたね。
- Q.そんな社長がケーズデンキで長く働き続けてこられた理由は何でしょうか?
- 吉原:私から商品を買ってくれたお客様が再来店したときに、前回買っていただいた商品はどうですか?といった具合に話しかけると、“調子いいよ”と言って感謝してくれて、それがうれしくて自然と仕事を続けることができました。そうして夢中で販売しているうちに、気が付くと店舗で1番の売上になっていました。前職ではお客様とこのような深いコミュニケーションをとることが無かったので、接客の面白さを理解する前に辞めてしまっていたんですね。ケーズデンキに入社して初めて接客の面白さや、お客様に感謝されるという喜びとやりがいを知ったんです。
社長に就任して
- Q.社長に就任するにあたり、戸惑いはなかったですか?
- 吉原:何店舗かで店長を経験をした後は、本社で働くことになりました。当社がフランチャイズチェーン(以下FC)の拡大期で加盟店を募っていた時代でしたので、FCになりたいというオーナーの方にお会いするために日本全国各地を駆け回っていました。印象深いのは、そこで当社の考えを伝え、共感していただいた方々に仲間になっていただいたことです。今の子会社の皆様ともこのころからのお付き合いです。それからは営業推進部長となり、店舗の売上の向上や業務の効率化を図り、店舗で起きた困りごとを解決してきました。続いて人事部長となり、従業員の会社に対する満足度がどうやったら上がるかを日々考え続けました。その後は管理本部長となり、営業本部管掌も務め今に至りますので、商品仕入れと店舗開発以外の業務には携わってきました。現場業務は熟知していますから、550店舗以上のお店を引っ張っていくことについては不安はありませんでした。ですが、会社の経営となるとこれからも学ぶべきところがたくさんあると思っています。会長が、店舗開発については長年携わってきておりますので、お互い補完し合いながら経営を進め、吸収すべきことはどんどん吸収していかなければならないと考えています。
- Q.社長になって、どんなことに取り組みたいですか?
- 吉原:変えるべきところと、変えてはいけないところがあると思っています。当社には、“がんばらない経営”という経営方針があります。短期的に無理をして良い成績を残しても長い会社経営には意味のないことであるし、自分の実力以上の力を出そうとすると無理をしてしまい長続きしない。場合によっては会社側が儲かるからと言ってお客様がほしくない商品を無理に売りつけてしまうかもしれない。ですから、従業員にはノルマを課していません。目標はありますから、それ以上の成績を収めたら評価されますが、目標に届かなかったからと言って叱責されることはありません。店長がやるべきことは、その店舗の従業員がいかに笑顔で楽しく働ける環境を作るかということです。それは社長になっても同じことです。全従業員が楽しく働く環境を作っていかなければなりません。
当社には、個人の自主性に基づいた配置転換・教育をするために、従業員の進路希望を調査する仕組みがあります。その調査シートの中には、会社に望むことを記入する欄もあります。私は人事部長だった当時、会社や制度への不満が書かれていたものについてはその全てに電話をかけて、話を聞きました。全てに連絡するまでに1年間かかりましたが、意味のあることだったと思っています。実際にやりもしないことを、その場限りの逃げ口上で“はい、検討します”ではいけません。検討したならばその結果をきちんと伝えないと信頼はなくなってしまいます。そうしたことを地道にやってきました。社長になってそういった対応は時間的に難しいかもしれませんが、これからもなるべく皆さんの声を傾聴したいと思っています。そして、私の使命は、“がんばらない経営”という考え方を、これからも一切変わらず守り続けて、従業員に伝えていくことだと思っています。
- Q.では、変えていきたいところはありますか?
- 吉原:“がんばらない経営”といっても、努力しなくてよいということではありません。私が社長に就任するタイミングで、3年間(2025年3月期~2027年3月期)の『中期経営計画2027』※1をリリースしました。その中の取り組み事項骨子1には、“家電に特化し安定した利益創出を目指す”を掲げました。さらにこの骨子の重点施策として、労働生産性の向上を図ることを掲げています。具体的には、高付加価値商品を販売することで一人当たり売上高と粗利額の増を目指します。当社はお客様のお話をよく聞き、会社が儲かる商品を無理に売りつけることはしません。その考えはこれからも一切変わりありませんが、一方で、他の家電量販店に比べてお客様に対するお勧めや提案力が弱いということが分析によって分かってきました。これまでは、まだまだ伸びしろがあるね、と言ってきましたが、この伸びしろを伸びしろのままで終わらせないようにしなければなりません。消耗品やセットで使うと便利な関連品もお勧めしなければ、お客様にかえってご不便をお掛けすることになってしまいます。社内での販売コンテストやオンライン研修などを増やし、一人当たりお買い上げ単価とお買い上げ点数を増やしていくことで労働生産性を上げていきます。
(2024年5月9日公表 中期経営計画2027より一部抜粋)
『中期経営計画2027』の達成に向けてと、その先を見据えて
- Q.最後にこれからの取り組みを聞かせてください。
- 吉原:私が社長の打診を受けて実際に就任するまで期間がなかったわけではありません。考える時間はありましたので、自分の弱いところは何か見つめなおしました。これからは経営に必要な幅広い知識を身につけながら、視野を広く持っていきたいと考えています。もちろん、女性管理職も増やしていきたいですし、会社不祥事が起きないように法令やコンプライアンスの順守の徹底も推進していかなければなりません。営業面を引っ張っていく以外にも、管理面でもやるべきことはたくさんありますが、一つ一つ、がんばらずに取り組んでいくことで、2027年3月期には中期経営計画を達成したいと思います。そして、重要なテーマとして、人口が減少してゆく日本にあって、これから先、他社との競争環境はより厳しくなっていくことが予想されます。ライフスタイルの変化やインターネットショッピングをはじめとする買い方の変化もどんどん進んでいくでしょう。私どもは、中期経営計画の3年間をかけて、まず着実にROEを8%台に回復させていき、地盤固めを図って参ります。そしてその間に、それよりさらに先の家電業界について話し合っていかなければならないと考えています。